「アフリカ」といえば「サファリ!」
サバンナに落ちる大きな夕日を背に映るキリンや象のシルエット
ナショナルジオグラフィックで観た草陰からインパラを狙うライオンの姿
こんな事を最初に思い浮かべる人は多いのはないでしょうか?
Safariとはスワヒリ語でそもそも「旅」という意味だそうです。なので現地の人に「サファリに行くんだ」というと、「どこに行くの?キリマンジャロ登山?セレンゲティ国立公園?」などと聞かれますが、私たちにとってSafariというとやっぱりジープに乗って野生の動物を見に行くあれの事ですよね。
タンザニアには野生動物のいる国立公園がいくつもあり、有名なのはセレンゲティやンゴロンゴロン保全地域で、広大な自然の中に圧倒されるほどの動物たちがいるそうです。
残念ながらその2つの候補は私の滞在していたDar es Salaamからはちょっと遠くて、予算と体力の関係から諦め、今回は小型飛行機で45分ほどで行けるSelous Game Reserve(セルース猟銃保護区)というところに行ってきました。
このSafariは今まで体験してきた事の中でも一番素晴らしかったので、皆さんにお勧めしたいです。もちろん遠いし予算や体力とか安全面とか...色々心配事はありますが、行くと決めて行ってしまえばなんとかなるって事がわかりました。
日本の旅行会社にもタンザニアサファリツアー等やっているところはあると思うのですが、私はできる限り予算節約でひたすらGoogleでTanzania Safari を検索しました。日程やレビューなど確認していくつか良さそうなところにメールして見積もりを出してもらい、いよいよ「私予約します!」と書いて送信ボタンを押した後はバッグに虫除けスプレーと蚊取り線香を準備して、一泊二日のキャンプスタイルのサファリに向かったのです。
まずは小型飛行機でDar es SalaamからSelousのLake Manzeへ飛び立ちます。
小型飛行機なので雲の高さを飛ぶのですが、雲の中に入れば雨が降ったり、もしかしたら空から動物が見えるかも...なんて私は子供のように窓にへばりついていました。一方同乗していたザンジバル島から経由してきたイタリア人グループとポーランド人カップルは、ザンジバルを嵐の中離陸したのが相当怖かったらしく、飛行中みんな冷や汗でお祈りしてました。「あの嵐の中飛んだなんて信じられない!しかもパイロットは冗談言いながら何事もない風なのよ!」と目を丸くして言ってましたが、私はかえって冷静で頭の良さそうなパイロットを頼もしく見惚れてしまいました。笑
45分後、飛行場という名の、大自然のど真ん中の何もない場所に着陸すると、すでにJeepが待っています。
今回サファリは一人旅で、しかもツアーに参加した日本人は私だけだったので、礼儀正しい謙虚な日本人でいて、こんな自然の真ん中で置いてけぼりをくらったらたまったもんじゃないと、そこにいる人みんなに「私一人だから絶対に忘れて置いていかないでね!!」とまずは必死にアピールしておきました。
そこから滞在するキャンプ地に向いながら早速Jeep でのGame Rideが始まります。
当たり前ながら動物園ではないので、どの動物に出会えるのか、面白いものは見えるのか、そういうことは全部運にかかっています。なので、初めのうちは動物の骨がそこに落ちているだけでWOW! と感動してしまうのです。インパラ一匹を見つけても車を停めて写真を撮っていましたが、だんだんインパラってそこら中にいて、当たり前に感じてきます。昔、ドキュメンタリーでインパラが肉食獣から必死の形相で逃げているのを観て、何てかわいそうなんだろうと涙していたけれど、あれだけ数が多いと増えすぎなんて大問題だし、やっぱり自然界のバランスはすごいなと実感しました。インパラはファーストフードだねとガイドが冗談を言っていましたが、まさにそんな感じです。
Selousは湖があり水辺の生き物や鳥の種類が豊富で、カバやワニが沢山いますが、みんな同じのんびりペースで日向ぼっこしたり、水の中にいたりでほのぼのしています。またここは東アフリカでは珍しいボートに乗ってのサファリができるのですが、その話はまた今度。
1時間半ほどのライドの後、チェックインと昼食のためキャンプへ到着です。
Essential Destinationsという所のツアーに参加しそこのキャンプ場に滞在したのですが、キャンプというよりまるでホテルで、自然のど真ん中、壁もなく野生の動物がやってくる可能性もある中、バーもラウンジもあり、さらにソーラーパワーでお湯も使えるしバッテリーも充電できるし、私にとっては設備、環境を合わせて最高の贅沢だなと感激しました。
人の手の入っていない大自然の真ん中に滞在するにあたって幾つかのルールがあり、まずは自然と動物に敬意を持つこと、スタッフのエスコートなく一人で外を移動しないこと、茂みなどの中には絶対に入らないこと(全て野生動物に遭遇する可能性のあるため)などさえ理解すれば、静かで美しく何よりも豊かな時間が過ごせます。
食事は滞在している人みんなで一緒にとり、夕食はは松明をセットして星空の下屋根のない外でいただきます。それもみんなで同じ経験をした、まるで大家族で食事をしているようでとても良い時間でした。
壁もない所に動物がやってくることはないのか?と思いますよね。実際に象などが朝食中にそばまでやってくることもあるそうです。もしくは獰猛な動物に備えて、アフリカで最強の部族と言われるマサイ族が常に周囲を見張っているのです。
このメインのラウンジから1分も歩かないところにそれぞれが滞在するテントがあるのですが、そこへ移動するのも必ずマサイ族の人にエスコートしてもらわなければいけません。実際に動物に遭遇したらマサイ族はどうするの?と聞いたら、まず目で威嚇するのだそうです。また彼らは棒(伝統的には槍)を持っていて、いざとなったらそれで戦うけど、動物もマサイ族が恐ろしいことはわかっているから、実際にここで何か起こったことはないよと言っていました。彼らが伝統的に赤い布をまとっているのは動物が警戒する色だからだそうです。彼らが私にとって非現実である世界を、当然ですが、何事もなく制しているのはとても格好良かったです。
見るものも匂いも音も、周囲には自然のものしかなく、隣のテントとも離れているのでまったくのプライベートな時間。シャワーを浴びてから思い切って真っ裸で外に出てみても目の前をキリンの家族が通り過ぎただけで、誰にも邪魔もジャッジもされず文字通り自然を体感しました。
ソーラーパワーでシャワーのお湯は出ますが、電気はないので夜はランタンとロウソクの灯だけになります。大昔はこんな風に生活していたんだなと想像にふけったり、そっと外に耳を澄ませたり、心も体もとてもスピリチュアルな気持ちになって、この時ほど一人できて良かった!と思ったことはないです。
私の他にも何人か一人旅の女性が滞在していましたが、自立した女性が自分の時間を求めて旅に出られるなんて本当に幸せねと共感し合っていました。母なる自然の中にいるからなのか「孤独」ではなく、「個人」の時間を強く感じます。この感覚は特に仕事や家庭に...といつもみんなのために頑張っている女性の皆さんにオススメです。何よりも「時間」が贅沢な現代、なかなか難しい事ではありますが、もしチャンスがあれば思い切ってやってみてください。
夜になるとガサガサ、ゴソゴソ、時々獣の鳴き声も聞こえてきて、これもまた未体験でそわそわ好奇心が湧くのですが、上から聞こえるのは象が果物を探してる音で、下から聞こえるのはカバが草を食べている音だそうです。「万が一動物が近寄ったり、危険を感じることがあれば、ホイッスルを鳴らしてね。助けに行くから」ということになっているのですが、一人旅最高!と言いながら、ホイッスルを握りしめて眠りにつくのでした。